地球の環境や生命にとって,「水」は非常に大切な存在です.水工システム系では,地球上の水と物質の循環,気候変動を視野に入れながら,水理学の基礎的事項から,流域全体および河川における水と土砂の流れ,地下水や都市の水文気象まで,幅広い視点から「水」に関する教育と研究を行っています.
雨が降らないのに川の流れが絶えないのは,河川に地下水が流出しているからにほかなりません.一方,扇状地を流れる河川では,河床への浸透によって流量が減少しています.流れが枯渇した川は水質が悪化しやすく,生態系にも悪影響が出るため,河川環境を維持するように流量を確保することが必要です.そこで研究室では,河川と周辺地下水との水交換を踏まえた合理的な水資源の利用方法を研究しています.
河川と地下水の相互作用のモデル化
扇状地における河川と地下水の水交換
都市化に伴う暑熱化を緩和するため,都市河川や運河などの水域を活用する提案がなされています.河川には,①水塊としての貯熱効果や②安定水温による顕熱フラックスの効果,③水面蒸発に伴う潜熱フラックスの効果,④冷涼な海風による“風の道”効果などの気温低減効果が考えられます.研究室では,名古屋市を流れる堀川と中川運河を対象に微気象の同時定点観測を実施し,河川に沿った海陸風の実態と大気冷却効果を明らかにする研究を行っています.
河畔に設置した総合気象観測計
“風の道”として期待される中川運河
交互砂州上の流砂,流れ特性
河道内に形成される砂州地形に着目し,河川における生物生息環境および植物生育環境を解明する上で必要な物理場の形成,変動過程を解明するための研究を行っています.また,砂州が形成されると,河川の土砂の動きが複雑化する可能性があるため,土砂動態の視点からも研究を行っています.
交互砂州(左図:実験水路,右図:実河川)
砂州動態把握のための現地観測
流路変遷事例
過去の航空写真を重ね合わせることで,実河川における様々な変化を読み取ることができます.これにより,いつ,河道に植生が繁茂したか,いつ,流路が大きく変動したかを調べることができ,過去の流量履歴をあわせて検討することで,その河川の特徴を読み取ります.こうした検討を行い,複雑な河道の変遷を調べることで,今後の流路変動(河岸侵食)予測,河道管理のための知見の提供を目指します.