流域における水循環の再生と水災軽減
流域の開発や都市化によって水循環が大きく変化
自然林地や農村地域を開発すると,流域の水循環は大きく変化します.地表の舗装によって雨水浸透が妨げられ洪水氾濫を招く一方,平常時には河川流量が乏しくなり水環境が悪化します.樹木や水域が減ることで蒸発散が減少し,流域の熱環境も影響を受けます.当研究室では,こうした流域の開発に伴う水循環の変化を評価し,その悪影響を抑制するための基礎研究を行っています.
①ゲリラ豪雨により,都市河川の洪水氾濫が頻発
市街地の拡大によって不浸透域が広がるとともに,道路の地下には下水管が張り巡らされます.雨水は側溝から地下管路を通って速やかに河川に流れ込み,表面流出量が増大します.下流では急激な洪水流量の増大となって,時には氾濫を引き起こします.最近では局地転短時間豪雨が頻発し,流域の狭い都市河川において特に大きな問題となっています.
②普段は流量が乏しく,水質悪化,生態系も破壊
雨が降らない日でも河川に流れがあるのは基本的には地下水が湧出しているからです.土地利用の変化によって雨水浸透が絶たれると,地下水位が低下します.河道の三面張り等の改修も災いして地下水の湧出が減り,平常時の河川流量が減少します.水深や流速の減少は水温変動や酸素不足を招き,水質悪化や生態系の弱体化など深刻な問題を招きます.
③水辺や緑地が減り,ヒートアイランドが深刻化
地表面からの蒸発や植生による蒸散は液体の水を気化させる現象で,周囲から熱を奪います.開発によって地表が舗装され,溜め池や水田の埋め立て,水路の地下化によって水域や緑地が減少します.蒸発や蒸散が減ることは,都市における人工排熱の増加と相まってヒートアイランド現象を加速させます.夏季の暑熱環境の悪化は人命にも及ぶ問題です.