大型プロジェクトの発足

平成24年度私立大学戦略的研究基盤形成支援事業の採択について

建設システム工学科,環境創造学科,建築学科,そして都市情報学部の教員19名の研究メンバーで申請していました

21世紀型自然災害のリスク軽減に関するプロジェクト

が,平成24年度私立大学戦略的研究基盤形成支援事業として文部科学省に採択されました。

本プロジェクトは,高度制震実験・解析研究センター(ARCSEC)(代表:宇佐美勉教授)の研究実績を基礎として,新たな研究の展開を図りつつ,研究拠点の基盤を発展的に築くものです。

 

研究プロジェクト名:
21世紀型自然災害のリスク軽減に関するプロジェクト
(平成24年度私立大学戦略的研究基盤形成支援事業・研究基盤を形成する研究)

研究代表者:
小高猛司

研究期間:
平成24年度〜平成28年度(5ヶ年)

研究テーマ:
1.連動型巨大地震に対する土木構造物の安全性と修復性の向上に関する研究
  (テーマリーダー:葛漢彬教授(建設システム工学科))

2.大空間構造物の耐震安全性評価による震災リスクの軽減
  (テーマリーダー:武藤厚教授(建築学科))

3.豪雨および水災事象の発生機構とリスク軽減方策に関する研究
  (テーマリーダー:原田守博教授(建設システム工学科))

4.水工学−地盤工学の連携による沿岸域低平地の自然災害リスク軽減への挑戦
  (テーマリーダー:小高猛司教授(建設システム工学科))

5.「中核被災者」を主体とした被災限界からの自律再建メカニズムの解明
  (テーマリーダー:柄谷友香准教授(都市情報学部都市情報学科))

研究目的:
 平成23年3月に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)がもたらした未曾有の被害により,あらためて巨大地震被害の恐ろしさを思い知らされた.さらに,平成23年9月に日本列島を襲った台風12号は観測史上最大級の豪雨災害をもたらすとともに,その直後の台風15号は東海・関東の都市域に大きなダメージを与えた.東日本大震災における津波被害にしても,集中豪雨による出水被害にしても,我が国の社会・経済活動が,被災ポテンシャルの高い平野部に集中していることが被害を拡大した一要因となっている.さらに気候変動に伴う豪雨災害も世界規模で頻発しており,我々が想定すべき自然災害に対するリスクは,この数十年の間に急速に増大している.本研究プロジェクトでは,都市域での震災や,集中豪雨に伴う流域圏の水害・土砂災害など,現代社会が直面している自然災害を「21世紀型自然災害」と位置付け,そのリスクを適正に評価し,かつ軽減をはかる方策を提案してゆくことを目的とする.

研究プロジェクトの意義:
 
戦後65年あまりにわたり,特に平野部において都市域が爆発的な発展を遂げてきたが,その経済活動が集中している土地の多くは,わずか1世紀前までは湿地帯であった.先の東日本大震災においての津波被害や大規模な液状化被害が拡大した要因は,この最も被災リスクが高い軟弱な低平地に社会活動が集中している現代日本の社会構造に由来している一面もある.本プロジェクトでは,海溝型地震や都市直下型地震など大地震時の都市域での被災ポテンシャルとそれに伴う震災リスクを適正に評価し,その軽減をはかることを目的のひとつとする.また,21世紀型自然災害として地震災害と並んで重要なものは,近年の気候変動に伴い頻発しているゲリラ豪雨とそれに伴う流域圏の水害・土砂災害である.さらに,豪雨と地震の複合災害もやはや想定外と考えることなど許されないほど現実味を帯びている.地震のみならず,豪雨も21世紀型自然災害を引き起こす大きなリスクに加え,それらのリスク軽減に関する減災研究の推進もはかる.
  さらに,現在の都市基盤を支える社会資本には,高度経済成長期に整備されたものが今なお現役として機能しており,それらの中には当初想定されていた耐用年数を過ぎているものも少なくない.最近の我が国を取り巻く政治・経済の状況下では,それらを順次更新することは難しく,ましてや耐災害性の高いものに更改してゆくことは一層困難となっている.そのような社会情勢が21世紀型自然災害を助長している面も無視できない.そのため,社会資本の高機能化等のハード的な災害リスク軽減の対策のみならず,現代社会においては,経済的かつ合理的な維持管理手法ならびに補修・補強方法の構築が重要となっている.また,本プロジェクトが想定する巨大地震や大規模水害などの自然災害が発生した場合には,都市機能や行政機能が喪失するとともに,膨大な被災者が発生することが見込まれる.機能喪失状態からの被災者自身による自律再建のメカニズムについて十分に検証しておくことは,来るべき災害後から早期復旧・復興するために極めて重要であり,その備えは広義のリスク軽減と位置付けられる.
  東海・東南海・南海地震が発生する際には,沿岸部での津波被害のみならず,都市域でも深刻なダメージを被る.東日本大震災の地震動は社会基盤構造物に致命的な損傷を与える震動域ではなかったが,次の地震では,阪神大震災以上に構造物に被害をもたらす地震動であることも想定される.さらに,広大なゼロメートル地帯を擁する濃尾平野では,豪雨水害や複合災害に対するリスクも極めて大きい.濃尾地盤の東縁に位置する有数の私学である名城大学にて,21世紀型自然災害のリスク軽減を目指すプロジェクトを遂行し,研究拠点を形成する意義は極めて大きい.